なんだろう、俺の発見伝

タイトルは友人の案。

昼飯30分スマホ片手書き大方晩飯時書き足し

※昼飯60分スマホ手書きの続きです。
ysk32585.hatenablog.com





「いやだからさ、結局のところホメオスタシス(恒常性)に勝てない人は何やっても痩せれないと思うんだよね、俺は」「えーひっどーい!いくら何でもそれはひどいですよ課長、セクハラですよ訴えますよ〜」…



「親父、いつもの」「ん、なんだい」「いつもの」「なんでこういう子に育ったかねぇ(カップになみなみ注いだアプリコットティーを出す)」…



「そういや昨日、突然ガバチョの台やってたんだけどさ、あれなんでズンドコベロンチョなの」「元ネタ知らねえのかよ、にわかかよお前ー、あれはアレだよ、そら、NHKの人形劇の」「あー、あれか、池真っ二つに割れたとこから、出てくるやつ」「そうそうミスターポテトヘッドな」「それはトイストーリーだろ、ピクシーだろ」「ファンタジー要素あったっけアレ」「まあいいや」「そうだな」…



「なんだってこのやろう!?」「だからその態度が好かねえっつってんだ」「なんだとこのやろう!?」「バーカ」「このやろう!」「このやろうって言ってないで殴ってみろよ」「殴ったらあ、表出ろ!」「ここで殴れよそんなに怒ってるんだったら」「あぁん!?」「どんだけでかい声で叫んでんのかもわかんねえか、今更気にすることでもないだろほら殴ってみろよ、お、どうした、案外肝が小さいんだな」「もういいわお前、通報、したから、警察に」「マジかよ、泣いてんじゃんお前」「警察だ!」「ほんとに来た!」…



入り口から、少し遠いカウンターに歩いている間に荒山豪太のいつもの憮然とした表情は更に険しくなっていた。

はっきり言って荒山豪太の興味を引くような居酒屋ではなかった。
絶えず嬌声と罵声が聞こえる、ヒト科男とヒト科女とガキみたいな大人が入り混じった動物園。ただそんな中でも酒が飲めればなんでもいいというくらいにハードルを下げていたからこそ我慢できていた。おもむろにカウンターに肘を付き、「酒」と呟いていつものようにズボンのポケットから小銭をジャラと掴んでバラっと差し出す。数えると50円玉が6枚、10円玉が9枚、5円玉が3枚、1円玉が7枚、計412円。350円の生を頼んだ。警察が介入し怒号が飛び交いだした店内の中はいっそう煩さを増し、その中でただ彼の周りだけが静寂を保っていた。奥で飲んでいた老人集団は騒ぎの大きさをもろともせず若鷹の歌の大合唱で、懐古と郷愁と愛国のエンドルフィンで集団でラリっているようだった。かすかに聞こえる店内BGMはテレビCMでよく見かける曲が流れていた。店内入り口ではひたすら罵詈雑言の横行とズンドコベロンチョの大合唱で、力と虚栄とハッタリのエンドルフィンで有象無象がラリっていた。警察が自分の職務が全うできないことを感じ取り応援を呼び店内の隅っこで体育座りをしている周りで大学生たちがスポーツドリンクの粉を販売している。中には料理の和え物についている胡麻を集めてその場で磨り潰して鼻から吸う真似をして、本当に吸った奴が咽て、その咳がアルバイトの女性の顔にかかり、衝動的に咳込んだまま座り込んだところ、そばの男性数名の介護によって瞬く間にもろ肌の素足にスポドリの粉を振りかけられ、「やっぱポカリサイコーだな」とそのかかとを下から下を這わしているうちに双頭の桃色の頂点が布一枚先にある熱狂も先ほど出てきた生ビールの冷気を急速に温ませる程度に、店内は加熱していた。

仏頂面を崩さないまま、荒山はビールを啜り、その半分ほどで急にこちらのカメラと目が合った瞬間に、ドキュメンタリーカメラマンを突き飛ばし、馬乗りになり、そのカメラと、顔を荒く掴んで、再び顔を見合わせた。
いいか、見ろ、お前、そこのお前だよ!お前!目を見ろコラ、お前、俺はお前が思ってるような俺じゃない、いったいいつ、どこで俺を映していいと許可した、してないぞ、これからもだ、もう一度言う、俺はお前が思ってるような俺じゃあない、俺は今の俺を普通とは思ってないが、しかし俺は俺だ、お前に俺がどう見える、何に見える、どう考える、それでどう表すんだ、350円のビールを啜る初老の男性を、名前に反したこの小さい背中を、倦怠を、だからこれもパフォーマンスだ、消すんじゃねえぞ、いいか、おい、しっかり見ろっつってんだ!でないとこのままカメラレンズを眼窩に入れ込むまで押しこむぞお前、分かったなら頷け、カメラずらすんじゃねってんだろーが、おい、金輪際お前は俺の周りに姿を見せない、いいか、見ろ、俺の目を、目で頷け、いいな、動くなよ、動いたらこのジョッキをだ、いや、やっぱり、気が変わった。1時間48分32秒、ここで録画は止まってしまい、カメラマンは右目に失明レベルの重傷を負い、2週間が経ち、我々は荒山豪太への道筋を失ったまま、つい3時間前に都心東京がズンドコベロンチョで溢れかえっていることを目の当たりにし、変えることができなかった過去を嘆きながら、再びカメラを回し、ハザードが最も進んでいる香川県高松市丸亀町商店街へうどんを食べにいくことにした。