なんだろう、俺の発見伝

タイトルは友人の案。

とにかく明るい話を頼む

熱したヤクルトならなおいい。と乳酸菌が死滅したピルクルを飲み干し、まあ我慢してやるか。とメロンのような胸元を開けっぴろげにして呟くOLに会えるということで噂の乳酸菌専門店「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ロンリーハーツ・クラブ」の店主竹芝武は、匿名総合情報サイト「ねぇchan」のぺんぺん草の一本も生えない殺伐としたネット民御用達の「オンデマンコーヒー」掲示板で、有る事無い事の四方山話を連投するのが専らの日課なのだが、全くもって須らく関係がない話なのでさっさと本題を始めよう。
鳥本翔太郎は、遅刻の常習犯だ。加えて、大学一年の前期において8単位しか取ってなかったという落単の猛者である。さらに言えば彼は黙る。よく彼を見ていると目にするのが、なにか言いかけようと口を開けたまま数瞬固まったらば、もうそのあとはてこでも銃口でも女の乳房でも決して口を開かない。しかしむっつり無愛想な顔で押し黙っているのではなく、何かを悟り言い淀み、諦めたような形でふっと顔を緩めたまま何も発さないので、普段相手をしているこちらとしてはこいつが何を考えているのか検討もつきそうにない。
とにかくいい加減な男であり、こいつの彼女だったエミリーは鳥本が大切にしていたウィトゲンシュタイン論理哲学論考をパクってブックオフで売って、iTunesカードに換金して彼の誕生日にプレゼントとして送る、というこれまたなんともいい加減な女なのだが、類は友あるいはと割れ鍋に綴じ蓋、やはりいい加減なやつはいい加減なやつらと戯れる。
案の定、鳥本が「君だってそうじゃないか」とでも言いたそうな顔したまま黙っている。 
確かにそうだ。こいつとつるんでる俺も奨学金を賭け麻雀で溶かしたり、コピー室で過去問を写してるやつをしばいて「それ元々は俺のなんだけど」といちゃもんと当てこすりで小銭を稼いだこともあった。