なんだろう、俺の発見伝

タイトルは友人の案。

太郎丸は『悲惨なふくろうを使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:SFと植物必須』です。

日課の散歩で、港の風を感じに、来た。船着場には、300人は入りそうな客船が横たわっている。どこヘ向かいに行く船だろうか。周りには人がいないし、聞く気もあまり起きないからまあ、気にしなくていいか。
時計を見ると午後8時を過ぎていた。まだ晩飯は食べてない。もう少ししたら帰ろう。
音楽プレーヤーでお気に入りを聞く。歌詞は英語だ。でも歌っているのは日本人だ。でも発音が聞き取りやすいし、口づさみやすいから好きだ。ギターもかっこいい。曲調はアップテンポ、でも歌詞の意味は悲しい。
 「誰も歩いてない道を歩いて、冷たくなったふくろうを見た
 誰も知らない場所を訪れて、枯れかけたプラタナスを見た
  見る必要もないことを知って、歩いて、寝て起きた」
僕の拙い英語力で翻訳すると、こんな感じだ。日本人が英語を書いているんだから、僕でもどうにか出来るんだろう。
歩いていると、月が雲の合間から見えた。視力0.01以下の目でははっきりとした輪郭が見えないけど、どうにかそれが満月とは分かった。いや、もしかしたら少し欠けてるのかも。と思ったけど、欠けてる月も満月に見えるんだから、それなりに目の悪さも使い用、ということかもしれない。
そんなことをぼんやり考えつつ歩いていると、港のフェリー乗り場の近くの自転車置き場で知り合いのような人を見た。目を凝らしてみるとどうやら杉浦さんっぽい。窓際一番目の僕の席から右に2,後ろに3の席の子だ。襟足の長い髪を背中の真ん中で結っている。給食を食べる班でいっしょになるくらいしか接点がないけど、見ているとなかなか元気な子だ。よく教室で人気な男子と話している。
でも今は見かけたからといって話したくなかった。第一こんな時間にこんな場所に僕がいるなんて、知られたくない。とちょっと抜き足差し足、彼女を回避しようとゆっくり距離を離していく。
ふいに彼女が振り返った。
「あ、太郎丸くん」
なんで気づかれたのか。なぜ振り返ったのか。僕は辛かった。逃げ出したかった。
訳のわからない汗が出た。
「こんなところで何してんの?」
「さ、さんぽ・・・」
「へー、太郎丸くんもそんなことするんだね」
「今日はたまたまこっちの方に来ただけだよ」
「ってことはいつも散歩してるの?」
しまった。要らないことを喋ってしまった。ああ、早くここから立ち去りたい。
「何聴いてるの?」
やめて、よ。
でもなんでこの子は普通なんだと思うと、焦ってる自分が急に馬鹿らしく思えてきた。
「エーンデールってバンドのunknown thing」
「あ、私それ知ってるあれいいよね・・・」
・・・・・・
と、いうのが夜間歩行部発足のあらましである。