なんだろう、俺の発見伝

タイトルは友人の案。

fire as a sign in the darkness


彼が目を覚ました時、彼の中で時間は反転していた。窓際からゆっくり滑り落ちるような日差しを見て、ようやく夕方だと判った。ジーパンを履いたまま眠りこけ、ケツの重みで潰れて三日月型に曲がっているラッキーストライクをぼんやり咥えながら火を灯し今日で「何日目」だったかを考えていた。なにしろ記憶がないし、時計もない。それに隣で寝ている女とこの密室の中ひたすらヤッていたのだから、女しか見ていなかったのだから、ただただ、あの時。彼は左腕のかすり傷が気になり続けていた。

ケータイはどこかに消えてしまった。財布も途中でどこかに落とした。金はなくてもタバコは手に入った。食事も今の所なんとかなっている。

心配事とすれば女とヤる前に、頭を叩き潰した隣の部屋の腐りかけの屍体がまた動き出すのではないかということだ。



「コーヒーが飲みたい」と彼がふと口にすれば、

「コーヒーいいね、飲みたい」といつから目を覚ましていたのか女が起きている。



「えっと、ところで名前」

「名前を聞くなら、まず自分から名乗るもんじゃない?」



食い気味に答えられてたじろいだまま

「じゃあ、いいよ」、とあっさり彼は引いた。



この部屋においては、彼がアダムか何かであり、彼女がイブであり何かだという雰囲気があったからこそのいつぞやの何時間前の一瞬の連続が、彼と彼女の間の空気を形作っていた。それ以外はあっても必要もなく、意味もない。今でさえも。次の瞬間にはドアが蹴破られ、おどろおどろしいどろどろの泥棒だか不審者か具体的にはゾンビかそれによく似た変態したおじさんが闖入してくるかもしれない。

免許証も無くした。家の鍵もついぞ見てないことに彼は気付いたがそれよりもタバコの灰皿を煙を目で追いながら探しているふりをしているだけだった。

あるのは左腕の傷と、ベッド脇のスコップと、病院から盗んだ輸血パック、どっかの誰かのバックに入っていたどこかのスーパーから盗んだであろうツナ缶、つい何時間か前に人の頭を殴り続けて変形したフライパンとXLのパーカーをダブダブに着た彼女はさながらfat girl slim /*ということにした方がいい
//とりあえずこれはここまでであと違うところから書き始めよう
//時間軸バラバラなかんじで。このあとの流れは適当に↓
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chapter 4 

ずっと頭が痛いしいつから痛くなったのかわかっても意味が無くて頭が痛くなる。頭痛薬などどこにあるっていうんだ。こんな惨状、目をつぶったらより目が悪くなりそうで、すやすや眠って良い夢を見ることなんてできそうもない。ひっきりなしにずっと部屋の玄関のドアの前でゾンビだか死体だかよくわからないくさった肉体がもぞもぞしてやがる。こんなんじゃ大学行けねーじゃねーかよ、ってそんな場合じゃないのか。とりあえず落ち着いて水飲も・・・止められてるんだった。
あー餓死ってこんな感じで死ぬのか、とか考えたことあったけどまじでそんな感じで死にそうじゃねえか。くっそー。

もう3限目過ぎてんじゃん、今日も自主休講でいいや。

つーか外どうなってるんだ。テレビないし、金払ってなくていきなりインターネットつながらなくなったからようやくやべえ、あそうだ、金下ろすついでに大学行こ、今日火曜だから2限目と3限目あったわと思って外出ようとしたらこれだもんな。ケータイ代も5ヶ月払ってないから使えんだろ。2週間ずっと冷凍うどんで食いつないできたせいだこれ。俺が冷凍うどんで食いつないできた間に世の中何かあったんだよこれ。
やばい焦る。ゲームなんかしてる場合じゃなかった。俺がソビエトロシアでドイツとかイギリスとか蹂躙して泥んこ遊びしてる間に何かに世界ごと蹂躙されてた、モンゴル民族かよ。
つーか金、金ねーっt!レシートと薬局のポイントカードしかねえ。
詰んだかこれ。詰みか。詰んじまったかいよいよ物理的に。これが孤独死ってやつですか。これが孤独死にいたる老人的なアレですか老人はネトゲやらねえか。
いや、まだ外でたらワンチャンあるから。なんとかなるから。でも出れねーんだよなあああ!何あれ。こわい。普通にこわい。アレ一応生モノでしょ?生きてたっぽい生物でしょていうか人間でしょ、ドロドロになっているけど。若干臭うんだよなもう腐臭来てんじゃないのかアレ。

そうだベランダから様子見りゃいいじゃん。あわよくば助けを呼びたい。
でもだめだな、人影見当たらねーし、ここ住宅街だからまっ昼間だから車もないのか。
いよいよどうすればいいかわからなくなってきたぞ。

・・・ベランダ横の仕切り、これ一応非常時にブチ破って渡っていいのか。
いくかいやまてよ、もしたまたま何かの手違いで5階のアパートの俺の部屋の前で人が倒れているだけで…
いやいやあの死体の周り血だらけだったわそういや。