なんだろう、俺の発見伝

タイトルは友人の案。

捻じって撚るは拗良瀬 巧

考えられることは全て考えたという意志を持って、私はこの解答用紙を白紙で提出した。
正確には用紙の端に「この紙幅にはわたしの解答は狭すぎるので単位を落としてもらって構わない」という一文を添えて。


2月、冬という季節は人を出不精にする。往年の友人たちは皆単位を取り切り、内定を掴んでいる中、4年後期履修科目木曜4限目「哲学思想と人間論」の試験時間に起床時の狭心症っぽい痛みに耐えながら辛くも間に合うように出席した私の努力に乾杯。人生、諦めと潔さが肝心である。半年前の私には想像がつかなかっただろうが、その自分ですら、4年前大学合格したばかりの頃の私には想像しがたいものだろう。
次の試験は、出席すれば単位が出る自動単位販売機と化した「地政学:ブリテン諸島七王国時代」の時間だが、まだ空き時間は有り余っていて、それにその講義には出ていたものの、履修自体はしていないのでその自販機に連なるおびただしい列にそもそも私は並んでいないのだった。
校内全面禁煙にした何代か前の学長を恨みつつ、学部棟最上階のトイレの窓からタバコだけ突き出して適当にズボンを下ろす。くわえタバコでは下を向くと目に煙が入って痛くて見れたもんじゃないが、ひとまず落ち着けるべき場所に落ち着き、括約筋の関所を今か今かと罷り通らんとしてくるものを罷り通らせるよう腰を下ろす。そして問題文が半分くらいは暗記の穴埋め問題で別に復習とか勉強しなくても普通に覚えてて解ける箇所があったことを思い出す。そして最初は固形物が、途中から液状のが、水の中へ落ちた時の飛沫がケツにかかってファック。便は腸内環境、健康のバロメータと言うので見てみるとやんぬるかな、日頃の不摂生を表す緑色、体内器官の動きが鈍くなったのを示すような錆のような色。どう考えてもこのままではヤバい気がするし、とりあえず生活リズムは直しておこう。昨日酒飲んだ時は妙に歯が痛かったし、万年片方の鼻どちらか詰まってるし、何よりロクなもの食ってないからか一昨日から震えが止まらない。一日2袋の柿ピーで済ませてきたこの48時間で体重も一気に成人女性の平均以下になった気分で普通にワンパンで女子に殺されそうなくらいだ。とりあえず、何か食べよう。
用を済ませたあと、ひとまずうどん屋へ行くことにした。16時35分、この時間に開いてるうどん屋は少ないのだが、高松の市街地に行けばはなまるうどんよりうまくて安いうどん屋は普通にいくらでもある。さっさとつぶれねーかなはなまる。商店街にあるうどん屋でしっぽくうどんを注文した時、財布を下宿に置き忘れてきたことに気づいた。ツケということにして、安心して食す。あったかいな。サイコーかよ。食べ終わる頃には血圧が上がり血行がよくなったのか震えも止まり、鼻詰まりから鼻水が止めどなく出てくる。全身がぽかぽかしてる温かさを感じる。
まだ卒業したくないな、これじゃあ。
体調が少し良くなって、タバコがうまい。元気とタバコのうまさが比例するならどんどん元気になりたい。そうだ、ジョギングでも始めよう、体が快調になったら(永遠に来ない)。

18時になったので下宿で財布を取りに帰り、近くのスーパーへ買い出しに行く。実はと言うかもはやというかいよいよ白紙提出した科目試験のあとは春休みを迎えるのみというところで、事実上アホみたいな答案を提出した瞬間から私の春休みが始まっていて、履修計画が正しく進行していれば一単位足りずに計画通り私は留年する。
祝い鍋として一週間分の具材を買い込み、ぶり牡蠣から牛肉、鶏肉、豚肉、そして一週間後に行き着く先の味はカレーと、7日分ざっと21食の鍋献立を組み立てつつ帰宅して、ひとまずPCゲームをすることにした。適当にきーぼーどのキーを押してPCのスリープを切る。


カチャ---